妄想の王さま

ジジ可愛い

じいちゃんの話

なんか、突然思い出したので湧き上がったことをかく。

父親方のじいちゃんの話だ。うちのじいちゃんはもし生きてれば百三歳になっている。いきてればなんだけどもね。

うちのじいちゃんはとても変わった人だった。実家の近所だったのでよく遊びに行ってたのだけど、ばあちゃんはよく遊んでくれたし、面倒をみて可愛がってくれたが、じいちゃんには構ってもらった記憶がない。

じいちゃんが死んでから聞いた話だけど、子供が苦手だったみたい。

遊びに行っても部屋にこもって、なんかしてるのは知ってた、でも部屋に入ると怒るからって、ばあちゃんが入らせてくれなかったんだよね。

ドアの隙間から見える部屋の中には、色んなものがぎっしりと並んでて、子供心にものすごい興味があったのを覚えてる。

その頃、親父から聞いた話ではじいちゃんは機械いじりが大好きで、その辺に捨ててあるテレビだのカメラだの、大きくない家電や機械が捨ててあると拾ってきては治していたらしい。治すまでが楽しいので治ったものを使うことには興味がない。

ばあちゃんが親父に、「また拾ってきたのよ」なんて言うのを、よく聞いた。

だから、小さい頃はじいちゃんという存在はほとんど意識してなかった。

それが変わったのは高校生になってからだ。バイクでばあちゃんに荷物を渡しに行った時だったと思う。ちょうど、じいちゃんが外で作業中だった。

バイクを止めて、軽く挨拶して、中に入ろうとしたら名前を呼ばれてさ、ちょっとびっくりしたわけ。驚いてる俺に構いもせずに、何か言われたんだけど聴き取れなくって、というか聞こえたんだけど、まさか、じいちゃんからバイクの名前を言われるなんて思わなかった。だから脳がついていけなかったんだと思う。

乗ってたバイクはホンダのスーパーフォアって400ccだったんだけど、当時はまだ新しい機種で、うちの親父とかもよく分かってないのに70過ぎのじいちゃんが「それはスーパーフォアか?」って聞いてきたんだよ。

それから、バイクのことをいろいろ聞かれて、すこし話した。ひとつ前の世代のバイクの話とか聞かせてもらってさ。すげー楽しかったのを覚えてる。

それで、うちのじーちゃんすげーってことに気づいて、それからはちょくちょく遊びに行って、話聞かせてもらって、そのうちじいちゃんの部屋にも入れてくれるようになってさ。

あの興味津々の部屋に潜入することができたんだけど、カメラが多分50台くらいあるって言ってて、カメラのこともいろいろ教えてもらったなぁ。

ところがな、この時期に、うちの親父絡めた親戚同士の揉め事がが勃発。詳しいことは書かないけど、ばあちゃんの家はかなりの広さで、じいちゃんもばあちゃんももう良い歳だしって、そこに目をつけた親戚が・・・

んで、じいちゃんのところに良く来てる俺をあまりよく思ってなかったらしく、揉め事のネタにされてしまったわけ。

それと前後するようにじいちゃんが入院しちまって、遊びに行っても親戚の監視付き。

そうこうするうちにどんどん弱ってじいちゃんは死んじまった。

というせっかくじいちゃんと仲良くなれたのに、親戚に邪魔された思い出でした。

これはじいちゃんが死んで5年くらいしてから分かったんだけど、じいちゃんは俺にガラクタのコレクションを渡したがってたらしい。まあ、それも親戚に邪魔されちゃったんだけど。

実はあの中にライカが何台もあったんだよね。つかってみたかったなぁ。